海はきらいさ悲しくなる 二人の恋がウソだと笑う

ほんとうは海が好きだった

初めてアイツと旅をしたときも
江ノ島の海を二人で見つめていた
都会の匂いがしたけれど
あれほど饒舌にしゃべっていた二人が
黙って遠くを見つめていた

決まり文句のように私は海が嫌いだとつぶやいて
アイツがどうしてと問い返したら悲しくなるからとこたえていた

*

私は日蔭に生まれて日蔭で枯れてゆくのよといつも口癖にしていたあの女
ほんとうは日向(ひなた)に出て幸せに浸りたいと夢見ていたに違いない

ほんとうの悲しさなどあなたにわかるものですか
あなたなんて幸せに溺れて海に沈んでしまえばいいのよ

*

私が幸せに溺れて深く沈んでゆくことを予言したのかもしれない

もしもあの時私がアイツに海が嫌いだなんていわなかったら
今頃は違うドラマがあったのだろうか

*

※タイトルは北山修詩集から

〔7月22日/2004年〕

〔次章に続く〕