あの夏、のこと ─ さあ、旅を続けよう ─

2006年 03月 15日


子どもが何かに怯えるように、しゃくりあげて泣いた。しばらくそのまま、私は背中をさするだけしかできなかった。

ひとしきり泣き終ったら、子猫が甘えるような目で見上げて、
「元気が少し戻ったよ」
という。
さぞかし心細かったに違いない。言葉が浮かばないのが辛かった。

信濃川は悠々と流れる。
国道のこちら岸からあちらまで、何十メートルあるのだろうか。河口は遥か先だというのに、満ち溢れんばかりの水をためて、悠然と力強く流れてゆく。この川を下れば佐渡の見える海まで辿り着く。

私たちの旅にあてはなかったものの、川の流れの中で何処からともなく巻き上がっている対流のようなものを眺めていると、明日の旅、そして明後日へと元気が湧いてくるのがわかった。同じ勢いをただ見つめるという単純なことで、二人は同じ明日を描いている。その確信と安心感がこの上なく大きい。

その子は、
「どこまで行く?二人だけの旅だけど」
「行けるとこまで行くさ、、、、文字村まで行けるかな、行ってみたいね」
「じゃあ、その前に、この川の河口あたりにある良寛さまのゆかりの地に寄ってもいい?」

そうだ、いつか昔に話をしてくれた、、、貞心尼のことを思い出した。
この子には貞心尼の生きかたに何かを求めようとしているのだった。

続く