あの夏、のこと ─ 阿賀川 ─

2006年 05月 25日


6月のいつか、ある日に、あの人のアパートまで逃げ込んで夜通しで話をしたことがあった。逢えない不満が募ってるせいか、触れ合う時間を惜しまずに過ごした。

あの日は大雨が都会を襲撃していた。夕食の買い物をしに近所に出かけたときにびしょ濡れになってしまった二人は、使い切ってしまわねばならない灯油の残りを焚きながら、ぬれた服を脱ぎ棄てて裸のままでカーテンも閉めずに過ごしたのだった。

あの夜も、
「逃げようよ、遠くの町に。新しい生活ができるよ」
と、そんな話をしたのかもしれない。

私たち二人の乱れた歩調は、乱れたまま夏を迎えて、人生という大きな塔のどこかしらが少しずつ軋み始めていたのだ。

怖くなる。
このオンナが途轍もなく怖い。

可愛く見える。
とろけるように可愛い。

そんな思いを胸に、旅は続く。

新潟県から山形県へと、県境の道しるべを確認したあたりで、道ばたにラーメン屋を見つけて昼食を取った。食事の時刻はとうに過ぎていた。

つづく