あの夏、のこと ─ あの橋の向こうへ(2) ─

2006年 07月 13日


私は旅を続けねばならない。

N極の磁石にN極を近づけると反発して後ろに下がるのと同じように、私が話し掛けるために近づくと彼女は後ずさりをした。いっこうに話が進まなくなってしまっている。

いよいよ、これで終わりだ。おかしな予感のようなものがあったのかもしれない。そそくさと彼女を置いて、私は、先に行くよ、という素振りでバイクに跨った。

走りだしても私は振り返らなかった。あの子が私のことを視線で追っているのかもしれないから、意地でも視線を合わせたくないと思ったのだ。

しかし、それは愚かな考えだった。あの子は来るかもしれない、と考えたことは誤りだった。

その橋を渡ってしばらく走ったところに空き地があって、日陰にベンチがあった。後を追ってきた彼女が気づくようにと思いバイクを道の脇の目立つところに止めて、ベンチに横になった。あの子は私を追ってくる、必ず来る、そう考えたからだ。

あの橋を渡ったこと。
あれは、私たちが別の世界へと本当に別れてゆくためのゲートを意味していたのかもしれない。

しばらく私は眠ってしまっていた。
陽光が傾き、そこには彼女の姿はない。後を追ってきた足跡もなかった。

つづく