枯葉の舞うころ

2006年 11月 24日


笑顔だった。
あの子はいつも笑顔だった。そんな記憶ばかりが残る。

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初めて出会った日に二人並んで高台から琵琶湖を見下ろした。青く透きとおる湖面の鏡のような静けさと、新緑の山肌の湧き出るような躍動感を、二人でじっと見つめていた。あのときあの子は何を考えていたのだろうか。

震えるように私はベンチに座った。「もっとそばにおいでよ、もっと…」と声を掛けてくれたことが、麻薬のように私の震えを止めてくれたのだった。

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秋に、別れた。
琵琶湖の、あのときとは反対岸の、水際の公園だった。
朝日が比叡の山々を照らし、静かな凪の湖面を背に、手を振って別れたのだ。
あの後、あの子は、どうしたのだろうか。

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彼女のアパートから少し歩いたところに大きなケヤキの並木道があった。
秋も深まり、街路樹が色づくころに、ふと、あの子を思い出した。
スーパーまで肩を並べて歩いたあのケヤキの並木には、さらさらと落葉が音を立てて風に吹かれているのだろうか。

そんなことを思ってセンチになっているときに、メールが飛び込んできたのだった。

(続く)