卒業写真

2007年 03月 21日


卒業写真という音楽が流れてきた。NHKラジオのアナウンサーが誰かの投書を読んでいる。

3月末。過去を振り返る人、未来を見つめる人、別れを惜しむ人…様々だ。みんな歓喜に満ちている。

僕の卒業アルバム。そう、どこかにしまったまま、引越しを繰り返し、今では行方不明になってしまった。

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昔、あの子の部屋を訪ねたときに、滅多に自分のことなど話そうとしないあの子が何故か、卒業アルバムを出してきて、高校時代の自分を見せてくれたことがあった。青春の一駒一駒を話してくれたあの子がいた。

あの子のあの部屋。

とりわけ輝いていたわけでもなかった。普通の学生時代だったのに、それをどうして僕に話そうとしたのだろうか。何かを聞いて欲しかったのだろうか。

あの子が精一杯に羽を広げて、自分の姿を元気で明るく大きく美しく愉快だったのだと見せようとしていることに、あのとき、僕は気づいてあげられなかった。何も気づかずにいたのだった。

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しばらくあとになって、二人で旅をした僕たちの間で会話を振り返ってみると、あの子は僕に何かを訴えたかったのかもしれないと思えてくる。

つづく