終楽章(7) ─ ワタシハ コレデ ─

2007年 07月 03日


 骨までとけるような
 テキーラみたいなキスをして
 夜空もむせかえる
 激しいダンスを踊りましょう

ユーミンが投げやりな声で歌っているのが私の頭の中でこだまする。
そうだ。ユーミンは溶けてしまうような自分のイメージをテキーラの中に投じて、大人の恋が神秘的な夜に彷徨って、少し妖艶に悪さをするのを歌いたかったのかもしれない。いや、私がそんな艶やかな女を勝手に想像しているだけか。

荷物を置いてキャンプ場を飛び出してあの子はお酒を買ってきた。「さらりとした梅酒」にしておくわ、と言う。

この子が出かけている間に、私はそそくさと外された指輪を財布から取り出して元の指に戻した。

少しずつ日が暮れてゆき、やがて明かりが欲しくなる。暗くなるまでは、疲れたふりをしてテントの中で寝転がりウィスキーを愉しみながら、私はじっとしていることに決めた。指輪を元に戻したことに気付かれてはいけないから。

所詮、酒など飲めないのに子どものように梅酒を飲んで、この子はどこか得体の知れない空間を彷徨っているようにぼんやりとしている。

猫が暖炉の前で無防備に両手両足を広げて仰向けに転がっている姿とよく似て、この子は何の不安もなく横になっている。

お腹を突っつくと、「コラ、やめろ」、と返事をする。眠ってはいないのだという意思表示なのか。

夜は静かに過ぎる。

「10年後の同じ夜に私たちこの同じ場所でまたこうして夜空を見てたらオモシロイね」

そんな夢物語は、持ちたくても私には許されない。
「ああ…」と返事をしたかどうかも記憶にない。

「一刻も早く縁を切って別れてきなさい」と目に見えない神様が私を脅迫してくるのだ。

一日中走りまわって埃にまみれた二人は、汗の匂いが充満するテントの中で、心と体のアンバランスに興奮する時間をやり過ごしていた。

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二人の間にどんな別れの儀式があったのか。
どんな言葉が交わされたのか。
記述した記録は何ひとつ残っていない。
旅の足跡は、私の心の中にあるだけだが、それも、滔滔たる時間の流れに少しずつ朽ち果ててゆく。

ひとりのオンナと儚い夢を追いかけながら、
二人だけが行き着ける場所を捜し求めて、
短い旅をしました・・・・、
という話。

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数ヵ月後、「エロ、変態オヤジ」と電話で啖呵を切られて、「アナタは別れが下手なのよ、ちょっとは反省しなさいな」とある人に諭された。

さらにそのまた数ヵ月後、何者かによって、事実無根の出来事を職場の要人に流布されて「オシマイ」。ココで「万事休す」とみなします。

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ワタシハ コレデ ×××× シマシタ …
昔、そんな宣伝あったよな。(笑)

気が向いたら「あとがき」があるかも。