〔2002年の塵埃秘帖4月号から〕 | |
いつも空を見ていた 好きだった人 いつも空を見ていた 飛行機雲が見えたら家まで電話をかけてきた おまえの部屋の窓からも見えるかーって尋ねた いつも空を見ていた 好きだった人 夜になっても空を見上げていた 星の名前なんか知らないけれど 天文学者になりたいなとつぶやいていた いつからかわたしも空を見上げるのが好きになっていた 言葉に詰まるとそっぽを向いて空を見た いつも青空ばかりじゃなかったけれど そんないくつもの顔を持った空がわたしは好きだった |
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雨がやんで小鳥がさえずりはじめると 緑の新芽を精一杯に吹き出した森の雑木たちが ざわめき出すような気がした 峠には木霊が棲んでいた 太陽が差し込み 雨のしずくがきらりと光った あいつはいつものように空を見上げて言った 別れのときが来た 新しい道を歩もう 空は青く 飛行機雲さえなかった |