別れの言葉をさがしていた |
街へ誘った。
もうコートも不要なほど暖かい日があると思えば、冷たい風の吹く日もあった。思いつきで家を飛び出してきた基花も、慌てて家を飛び出した私も、ふたりともギクシャクした格好で、「私たち、駆け落ちの恋人同士みたいね」と笑った。 まんざら嘘でもなかった。 ああ、私はこの女を裏切ることなど出来ない。でも、このままだと私たちには破局しかない。私の想いは沈み込んでゆくが、基花は演技をしているように決して暗くは振舞わない。 この世に生まれて、あなたと私 なんて潮風が爽やかなのだろう。この子とふたりでいると海の放つ哀しさがこれっぽちも感じられない。海に私の身体が融けてゆくような錯覚が襲いかかる。基花と深い海に沈んで行けたら幸せになれるのだろうか… 〔2004年春に記す〕 |
〔次章に続く〕 |