未練たらしい自分が途轍もなく嫌だった

別れてしまいたい、別れなくてはならないという宿命だった基花に あまりにも心のない言葉を放ってしまった自分がつらかった。

別れが間近に迫っていることに気付きながら、少しでもそのことを考えないようにしていた。けれど、心を隠すことは出来なかった私のひとことでそっぽ向いてしまった基花は、(実はそのとき、私は必死で彼女に泣き叫んでいたのだが)、私を振り返らなかった。

別れとはこういうものだ…と、そう私は思わなかったし、思えなかったが、背を向けて走り出していた。たった今まで私たちが目指そうとしていた地に向かって、ひとりで放出されたのです。心は何度も振り返った。後を付いて来るはずもないない基花の姿を期待している。しみったれているけど、付いて来て欲しかった。目標にしているそこまで一緒に行きたかった。

国道は北へと向かう。そこに分かれ道のないことを確かめながらどんどんと進んだ。大きな分かれ道があると、停車して彼女が追って来ないかと待った。大きな道の駅などでもバイクを止めて、あからさまに休憩をした。しかし、彼女は追いついてこなかった。

基花は言う。あれから?そう、私はともだちに電話をして、今の場所がいったい何処なのかを尋ねたんだよ。ひでぇ男だね、恋人を棄てて先に行っちまいやがって。私は信頼して付いて来てるんだから地図も持ってないのよ。どうやって東京まで帰れって言うのよ。あの晩かい?公園で寝たよ。怖かったけど、テントかぶってね。夜が明けたら高速道路で一気に東京に帰ったわ。貴方のことなど憎しみで殺したやりたかった。体の中に昨日の夜の体液が残っていて、それが少しずつ下着に流れ出すと、いっそう腹が立った。もう、愛などなかった。初めから無かったのかもしれないと思ったよ。

もしかしたら追ってくるかも知れないと思った私は、典型的なバカだった。夕方になっても、基花がそのあたりの公園に居ないかと気にかけていた、基花が私を追って来るならここに来るだろうという宿を探して泊まったが、彼女の姿はない。当然である。彼女は私が泊まった宿には死んでも来るつもりなどなかったのだから。

少なくともこの時点で私たちの運命的な別れは完成されていたのです。

〔2004年 5月中旬に記す〕

〔次章に続く〕