冬 その1

あの日もどしゃ降りだった。

寒冷前線が通過して、雨はいっそう強くなり、アスファルトには水溜りができた。ふたりで傘を差してスーパーに夕飯を買いに出かけた。さながら昔からの夫婦のように寄り添って歩いた。合理的で理屈家であった基花は、相合傘で歩こうとせず、キッパリと断った。その割にはスーパーの中で大好物のお魚を買っている私を大目に見た。

まだ日の暮れる時間ではなかったけど、部屋の電気をつけなければ薄暗いアパートだった。窓の外には建物の壁が迫っていて、カーテンを閉めることはほとんどないと言う。この日も例外ではなく、カーテンを開けたまま部屋の明かりをともし、ふたりは過ごした。誰かが見ているかもしれないという恐れなどこれっぽちも感じず、動物のように何度も何度も抱き合った。

クリスマスの夜だった。二人でサンタクロースの思い出話をしながら夜を過ごした。

〔次章に続く〕