終章 その1

2008年 03月 21日


「幻の旅 東北」シリーズを八話、「名もない峠」の話を二話、書きました。その後、話をはぐらかすように脱線していましたが、いよいよ終章に入ります。

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終章

幻 の旅、東北 のときに撮影した写真がミニアルバムに何枚も閉じこんである。そのことを細君は知っているし、いい加減で棄てたら、と言うこともあるが、どん な大掃除のときでもその写真に手をつけることなく、私も棄てる勇気を振り出せないまま、今もなお写真はそこに保存してある。

不思議な写真だ。

鶴さんと、鶴さんの兄さんと一緒に、郡山の家の前で撮っている。この日は、お昼頃から雨に見舞われ、二人で阿武隈洞に出かけるものの、途中から雨具を着て走ることになったのだった。

(今でいうコンビニで売っているような)簡易の雨具しか持たない鶴さんは、後ろのシートに乗せられてどんな気持ちで雨のツーリングに付き合ってくれたのだろうか。

「幻の旅 東北8」の最後で私は東北を去る。鶴さんと会ったのはあれが最後だった。

それから、彼女のことを気にかけないようにする日々が続いたのだが、2,3年前にふとしたことで、彼女を探す手掛かりが見つかった。

それは、小樽にある彼女の母校のクラブOBのホームページの事務局さんにメールを入れたのが切っ掛けだった。人を探しています、と問い合わせたら返事がきたのだ。もしかしたら、居場所が見つかるのかもしれない。

東京で再会する切っ掛けとなったのも、深夜であったにもかかわらず名字を頼りに番号案内で探し出し電話を掛けたところから始まったのだ。

今、再び、彼女が見つかるのだろうか。