まず行いたいことは細胞診です。腫瘍の種類や場所によっては腫瘍の細胞を周囲にばらまいてしまう可能性があるというマイナス面よりも、ほぼ痛みもなく“しこり”に関しての情報を得ることが可能なプラスの面の方が大きいと考えます。
他の検査を先に行う必要がある場合もあります。
注射針を用いて、腫瘍の中の細胞を採取して、標本を作製し、それらを顕微鏡で観察します。 |
実際の細胞診の顕微鏡画像 |
炎症性腫脹 | 良性腫瘍 | 悪性腫瘍 |
細胞診を行うことによって、判断したいこと @腫瘍なのか否か A腫瘍ならば、良性か悪性か B年齢・場所・犬種などから考えられうる腫瘍のリストアップ
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欠点
腫瘍細胞が取れないことや情報量が少なすぎ/多すぎて、判断が難しい時があること。 |
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ある腫瘍を例にしますと、細胞診で良性腫瘍が予想されますが、実際に病理検査を行い具体的な
腫瘍の種類の判定がされると、統計的にまれに転移を起こす良性腫瘍と診断される場合もあります。 細胞診では、予測は立ちますが、そこまでの診断を確実にはできません。
それでもメリットの方が大きいため、多くのケースで積極的に行っていきたいと考えます。 また、作成したスライドを外部の検査機関に送り、専門医にも確認してもらうことも可能です。 |
腫瘍の全体もしくは一部を切除し、組織のスライドを作成して、顕微鏡にて診断を行います。
外科的摘出に続いて行われることが多い検査で、外部の検査機関に切除した腫瘍を送付し、スライド作成および診断を依頼します。
非常に薄い腫瘍の割面(スライス面)で、スライド標本を作成し、顕微鏡にて観察します。 |
実際のスライドと顕微鏡画像 | ||
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細胞診よりも診断精度はかなり上がりますが、100%正しい診断ができるわけではありません。 (写真の標本は腫瘍の一部分に過ぎないこと、同じ標本でも専門医により 診断が異なってしまう判断が難しい腫瘍の場合もあります。) また、腫瘍の全体あるいは一部を採取するためには多くの場合、鎮静・麻酔を必要とします。 |
ある腫瘍であれば外科的摘出、またある腫瘍では抗がん剤治療が第一選択といったような感じです。
外科的摘出が選択される腫瘍でもその再発率を加味し、抗がん剤治療や放射線療法を引き続き行うのか、手術に併用するのかなど選択の幅は広く、診断ができれば、その腫瘍における治療法の選択や今後の腫瘍の進行・再発の予測の一助となります。
可能な限り腫瘍に診断をつけて、治療に進めるのが理想ですが、必ずしもそのように進めることができるとは限りませんし、現時点で最善とされる治療を行ったとしても、いい結果ばかりが得られるわけではありません。
治療としましては、下記の治療を多くのケースで組み合わせて行っていきます。
根治治療に分類したものは緩和治療としても実施します。
治療選択肢
※ 放射線治療は本院では行えません。
緩和治療に分類したものでも根治としての効果が期待できることもあります。
腫瘍の診断をもとに有効性が確かめられている治療法を選択していきますが、選択する治療法、その数により治療費は異なり、組み合わせればその分費用は膨らんでしまいます。
外科的に根治できるもの以外は、その治療に確たる答えはないといえますので、対話により治療法を決めていくしかないのかなと考えております。
では実際のケースを紹介しつつ一緒に考えてみましょう。 ≫≫次のページへ