自然対流を考える 「自然対流は解析がむつかしい」ことをよく聞きます。これは強制対流の感覚でメッシュ を切った場合に誤差が大きくて正しい値が出ないことを指しています。  自然対流の難しさ、それはどこにあるのでしょう? 1)流れの源がない。確かに自然対流はFANのような風を起すデバイスはありません。 自然対流においては空気の膨張→密度の低下→浮力の発生といったメカニズムで空気が 移動します。  そうです、風ではなく空気の移動と考えるべきなのです。この浮力は空気の温度に関係 していますのでこの空気の移動も含めた「系としての結果」が精度よく計算できないと 精度が悪くなってしまうのです。 2)温度境界層の問題 流れを考える時、固体との界面において流体は流れていない。 従って、固体との熱のやり取りは伝導だけで行われる。これは重要なポイントである。 界面から離れるに従って、粘性の影響を受けながら次第に流体はスピードを上げて流体 本来の流れに戻っていく。  従って、粘性の高いもの程、そして速度の遅いものほど粘性の影響を受け流れが遅く なる。この影響範囲を速度境界層という。速度以外にも、熱の影響範囲を温境界層という。 温度境界層の中では「熱はこもる」。自然対流の温度境界層は流れが遅いため成長が早く、 20o程度の移動距離で境界層は数oにも達する。  この境界層の中で温度は著しく変化しており、この数oの空間を細分化しなければ精度 の良い解析は行えない。 この様な条件を考えず、強制対流と同じ粗いメッシュを用いれば当然、流体の移動による 熱の持ち去りは充分に反映されず、温度は20%〜30%程度高く出ます。   3)解析精度 結局、自然対流は境界層を如何に精度よく解析できるかということになり ます。固体の一層目を薄くし、如何に早く流体を動かしてやるかと言うことです。 どれが自然対流に適しているかは次回で考えます。