第27話【花も嵐も】 浜坂ユースホステルにて<山陰>


浜坂ユースというところのお話をしよう。

萩を旅しているときに、美味しいホタルイカがご馳走になれるところがあると聞いて、私は何の迷いも持たずに浜坂ユースにやってくることになりました。ゴールデンウィークの移動性の低気圧は、九州地方から近畿地方に向かって1日がかりで移動します。

萩から浜坂までその雨雲と一緒に移動してきたずぶ濡れの私を、優しくもてなして下さった人がありました。それはこの新年度になって浜坂ユースに転勤してきたばかりのご夫婦でした。まず雨具を脱いで荷物を部屋まで運んだら
「とりあえず談話室にでも入ってほっこりしえくださいね」
と言って下さいました。

缶ビールを片手に畳に座った私に、奥さんがビールを飲むためのコップを差し出して下さる。ビール好きならご存知だと思いますが、缶ビールはコップに移して飲むほうが美味しい。何となくですが、アルミ缶の匂いのような味がするのです。
そのことをご存知だったのでしょうね、奥さんはップを用意して、すっと私の前に差し出してくださったのです。嬉しかった。

おまけがありまして、ホタルイカの料理を小鉢で添えてくださった。居酒屋みたいですが、ずぶ濡れでへとへとだった私にとって、この上ないお出迎えをしていただきました。それ以来、浜坂ユースは私の常宿になってゆくのです。

ここの奥さんのこと。初めは近所の女子高校生が遊びに来ていて、そのお仲間かヘルパーさんだと思っていました。そしたら、奥様だったのです。ご主人もなかなか魅力的な人です。

諸寄の競りに案内してくださったこともあります。社交的で、地元の漁師さんなどとの親交も熱く、味のある人です。美味しい夕食をご馳走してくれるためにいろいろ思案してくれているんです。旅好きだそうで、ユースの職員になっちゃったらしいです。

あれから10年近く過ぎますが、今は退職されて、別の道を歩んでらっしゃっるようですけど。


2006年6月 5日 (月曜日)