第3話【花も嵐も】 酸ヶ湯のかわいこちゃん<青森県>


青森を走るなら酸ヶ湯は絶対のチェックポイントだと思う。温泉が好きならばなおさらのこと、多少面倒でもここのお風呂に寄って欲しい。東北にしては400円(1996年当時)は少し高かったけど、惜しまずに寄った私の選択を称えたい。
湯舟は千人風呂といわれるだけあって広い。昔ながらの混浴になっていて、脱衣場が男女別々でありながら、湯舟には男女の区別はない。大きな浴槽の淵の両端 に境界線マークがあり、そのポイントを繋いだ線が男女の湯舟の境界を意味するらしい。プールのようにラインが引いてるわけでもなかった。その湯舟の淵で、 いい歳の爺さんたちがその境界マークぎりぎりのところにスズメが電線に止まるかのように並んでいる風景が滑稽だった。ばあさんたちはそんなことも気にとめ ない素振りでオープンに湯に浸かっている。まずまず家庭的な雰囲気が溢れていたと思った。
お湯から上がって着替えを済ませ建物の前の駐車場でくつろいでいるときに、駐車場の片隅にある売店の売り子さんと言葉を交わしたときのことだった。可愛らしい子だったのでおでん買うことにした。
そのときに彼女に声を掛けるきっかけは、
「筍おでんをください…。青森では何が美味しいですか?」
だった。彼女は、私の質問にすかざず
「りんご」
と答えてくれた。即答でした。でも私が期待していたのは、違う。
「それは今はないでしょう、今から食べに行くものですよ」
私はこの旅で美味しいもの探していたので、彼女にそう尋ねたのである。でも、赤いほっぺの、津軽訛りのその子と、たったそれだけの会話がとても嬉しくて仕方がなかった。
お味噌が白くて、生姜が少し入っていて、とっても美味いおでんでした。彼女のおかげで酸ヶ湯は最高にいい思い出になった。
もちろん、あれから何年も過ぎているのでその子はその店には居ないだろけど、青森の子って可愛いかったなあっていう印象ばかりが甦る。
旅から帰ってズームイン朝というテレビ番組を見ていたら青山さんというアナウンサーがレポーターで出ているのを見て、その人が少し訛を交えてインタビューするのが好きになってしまった。津軽の子はやっぱしカワイイのだ。