第31話【花も嵐も】 大観峰で長話しをした娘さん<阿蘇>
1994年のゴールデンウィークのツーリングのことだ。
やまなみハイウェイの長者原で野営をしたあと、阿蘇山方面に向った私は、ミルクロードを満喫して大観峰までやってきた。ゴールデンウィークというこ とでたくさんのバイクが集まってきていた。マスツーリングの人たちが多く、快適な道路だけにスピードが出るタイプのバイクに乗る人たちが大勢だった。
阿蘇の高原に来たのだから美味しい牛乳を飲んで朝食としようと思い、お腹も減っているしそろそろ行こうか、とお尻をあげたとき、一台のバイクが私のバイクの近くに止まった。
私は近くの小高い芝の上に腰を下ろしてたので、その止まったバイクのことなど気に掛けず何気なしに眺めていた。
ヘルメットを脱ぐと若い女の子だった。駐車場のあちらこちらに群がるマスツーバイク人たちの視線が一斉にそちらに集まったような気がする。
「よし、ここはやはりソロの特権だから」と思って、私のいるところからその子に声を掛けたら彼女はこちらに歩み寄ってきてくれるではないか。
なにわナンバーだったので
「大阪からにしては荷物が少ないけど」
と言うと
「違うんです。今は北九州、柳川って知ってます? あそこにいるの。大阪に5年いて今年の2月に実家に帰ったの」
ぷーたろうだという。
あのころ、石野陽子ちゃんがテレビによく出ていたので、彼女が石野陽子に似ているように思った。単純な私は、嬉しくなってウキウキし、周囲の視線を僅かに感じながら2時間ほども話し込んでしまうことになる。
何を話したのか、まったく覚えていない。すっかりお尻が地面と仲良くなって、バイクのエンジンも冷えきってしまっている。こういうときって、お別れがとても辛い。
もしも、もしも・・・・です。
あのとき「一緒にミルクロードを走ろう」と彼女を誘っていたら、この年の九州ツーリングの展開はまったく違ったものに変わっていたかも知れない。