長い夜 その4
2008年 01月 08日
静かな夜だった。触れ合うことより、満ちてくる哀しみを受け止めることに必死だった。
ひろちゃんがタンポポの話をしたのは、この夜が最初だった。彼女のしゃべり口調に哀しさはなかったが、引き付けようとする気持ちはあったのかもしれない。
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「タンポポには日向で生まれた奴と日陰で生まれた奴がいるんだよ。日向のタンポポはいつもいっぱいのお日様の光を受けて幸せに育つんだけど、日陰のタンポポは一生日が当たらないんだ。でもね。日陰のタンポポは日向のことを一生知らないんだから、それはそれでいいのよ。日陰でも幸せに暮らしているんだ。」
あなたに巡り会えたことが一番の幸せです、とは口には出さなかったが、強く強く私の腕にしがみついて、「このまま行こうよね、ねっ、ねっ」と小さな声で囁くのだった。
私たちが長い旅を続ける間に、彼女はこの話を何度もして、「私はもういいの、それで幸せだから…」と言う。これは彼女の一種の人生哲学のようなものなんだなと、そのとき、私は考えた。
長い夜は、罪を残しながらも、更けていったのでした。