ふたたび、旅に

桜の花はいとも簡単に散ってしまった。綺麗に咲き誇った花の回廊をふたりで歩くことをきっといつか叶えたい、と基花も私も願っていることは間違いない。夢は簡単には叶わない

オレたち、出会って1年になるんだなあ。
あなたが「オレ」って言うのを初めて聞いたわ。
1年過ぎてもまだ知らないことだらけよ。

嵐のような雨のせいで無理やり散らされた花びらが、路地裏の水路をゆっくりと流れてゆく。水面から三輪車の車体の一部が見えている。ああ、この街を出てしまおうか。そんな弱気が自分を襲う。

東北地方に向かって走れば桜も咲いているから、私は旅に出るよ。あなたとどこかで落ち合おうと思っているの、とメールに毎日のように書いてくる。
さて、出かける準備をしよう。今度こそ、別れ話を切り出そう。

ぼくたちはこうして
手をつないでいるときが一番美しいね
誰にも邪魔されないで
遠くまで逃げてゆける
おなかがすくときも
眠くなるときも
強く握り締めたくなるときも
いつも
わかるんだ
幸せになろう

越前から越後へと続く北国の街道は、灰色の海を背にして枯れ果てているように見えた。でも、私たちは何度も何度も止まって、何も語りあうこともなく隣どうしで道端に腰かけて海を見て、ひとしきりふれあいを味わって、また走り始める。

〔2004年 5月初旬に記す〕

〔次章に続く〕