もう会えなくてもかまわない、

あの男は私を置いたまま、北に向かって走って行ってしまったの。
そのうしろ姿がやけに瞼に焼き付いていたのが気に掛かった。

でもね、やっぱしね、私には男なんて無縁なのだと思った。
何度も何度も騙されて、またエロな男に捕まってしまったのに気付かずに、幸せになれると思って旅に出た。
それが間違いだった。自分のすべてを投げ出してしまった。

昔、男にありったけの金を持って逃げられたことがあったの。
あの朝を思い出したよ。
ドラマのような朝だった・・・。

愛なんて嘘っぱちよ。カラダが欲しかったんだよ。だってさ。私ってそんなに美人じゃないからね。
少しは可愛いと思ってくれたのかね。
あの言葉も嘘だったんだろうね。
ああ自分の心も汚れて行くような気がするわ。


基花には、ふたつの心があった。
男を許せない、許さない心と、
そして、ほんとうに微かだが、少しは許してもいいかなと思う心もあった。

〔2004年 5月中旬に記す〕

〔次章に続く〕