もう二度と会えることなどないと思っていた
もう二度と会えることなどないと思っていた。私のことなど許してくれる訳がない。憎んでも憎みきれない奴だったはずなのに、呼び出したら逢ってくれるという。

落ち合う場所は、琵琶湖の畔だった。比良山が湖面の向こうに見える。朝日に薄ぼんやりと赤くなっていた。
まもなく冬を迎えるころだった。

私は過去の写真を胸のポケットに仕舞い込み、真夜中に家を出た。真っ暗の国道を琵琶湖に向かって走った。
朝日が昇るときに空が赤くなった。夕焼けと同じように赤くなる。

人は赤い空を見上げて、熱いものを感じる。それは日の出と日の入りで同じ色なのに、感じるものが違う。

本当のことを言えば、私は別れたくなかった。

初めて会ったあの日、比良の夕焼けを見ながら湖東の農道の中を走り抜けた。沿道の蒸気機関車を見て思わずバイクを止めた、あのときに走った湖畔を再び走って、別れの朝を迎えた。

再会してすぐに、ポケットから写真を出して渡した。

最後と思って、感慨深く空を見上げた。

同じように明日の旅の道順を決めるために空を見上げたこともあった。それを思い出すのも今が最後だ。別れのときだった。

〔2004年6月末記〕

〔この章はひとまず終わろうと思います〕