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冬 その2 |
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目がさめて布団の中で雨の気配を感じ取った。早朝、音もなく深深と降っている。 それほどにも寒さは厳しくなく、難なく布団から出ることができた。隣で眠る基花の寝顔をしばらくうす暗がりで見つめていたが、もう一度寝入る気持ちにもなれなかったので洗面に立った。 霧がかかった山々が二階の窓から見えた。窓の下の軒先には私たちのオートバイが止めてあり、しっとりと濡れた地面を避けて置いてくれている宿主の心づかいが妙に嬉しかった。垣根の向こうにある道路を走る車もなく、人の声も聞こえてこない、静かな朝だった。 昨日、私たちはあてもなく一日を走り回り、名もない山里に辿りついたところでちょうど日が暮れかかった。小さなバス停の待合所の前に間口の広い料理旅館風の家があった。正面に業務用の大きな冷蔵庫が置いてあり、脇の棚にはお菓子や雑貨が並んでいた。この山里にはどうやらこの一軒だけしか店がない模様であることに気づいた私たちは、玄関から店の主人を呼んだ。 「今夜の宿を探しているのですが」 クリスマスから幾日かが過ぎ、街は静かになってゆく。 |
| 〔次章に続く〕 |