前回に引き続き、自然対流で必要な計算手法について考えます。 格子、つまりメッシュについては前回説明しました。今回は自然対流解析に用いられる 格子とその影響を考えます。 自然対流解析に用いられる格子の紹介 @まず考えられるのは「重合(重畳)格子」(Overset Grid)。細かいメッシュを解析対象 近傍だけに被せ、全体はザックリとした直交メッシュで、細かいメッシュで計算した値と 全体メッシュを重ね合わせの理で計算します。問題点はそれぞれの格子の計算が独立して 行われることで、2つのメッシュの演算結果を如何に上手く連動させるかが精度向上の カギになります。解析物体の移動に伴って細かいメッシュの座標を変更するのみで良い為、 移動体の流体解析に良く用いられます。 A続いて考えられるのは「非構造メッシュ」。2次元の4角形や3次元の6面体をスムースに 細分化するには形状に制限がつきますので3角メッシュ、4面体メッシュが主に用いられます。 固体近傍は細かいメッシュで切り、固体から離れるに従って大まかなメッシュへ移行して いくもので、構造解析では汎用的に用いられます。一度座標変換を行うので計算が煩雑に なります。そして、最大の課題は対象物に合わせて上手く6面体の非構造メッシュが生成 できるか?です。  6面体要素でも粗密を付けることは可能ですが形制限はあるため、よりスムースな4面体 要素が用いられる事が多いのです。しかし、4面体要素で自然対流を精度良く解析できた 事例はあまりないのではないでしょうか?形状的に難しくても6面体要素が要求されるの は仕方ないと考えています。 B「不連続メッシュ」もよく用いられます。固体近傍のメッシュは細かく、直方体で切り、 全体メッシュへは節点不連続で情報を渡します。重合メッシュとよく似ていますが、節点 は詳細メッシュの最外殻で全体メッシュと整合しています。全体メッシュの計算値を 使って詳細メッシュを再計算しますので精度は安定しています。 Cよく似た格子構造に4分木、8分木構造があります。主節点の値を分割していきますが 分割後の節点で計算した値は主節点と比較しませんので細かい表現はできますが、精度は 向上しません。セル1個毎の重合格子と考える事もできます。 Dカットセル 直交格子の中に流体と固体の両方が存在する場合、セル内計算領域を固体 と流体で分け合いますが、セルを分割するので細かな領域が多数できます。これらを適切 に合体し、新しいセルとして計算して、結果を分け合う手法が採用されますが、壁からの 距離に対応した関数を用いて補間する手法も提案されています。しかし、カットされた セルの中の流体は素直には計算できす、補間関数をマトリックスに組み込んで計算する 方法も考えられています。強制対流では精度も他のメッシュ並みと言われています。 Eマルチブロックは全体を複数のブロックに分け、それぞれにメッシュを切っていく方法 です。できたメッシュ全体をキメラメッシュ、パッチドメッシュとも呼ぶ時もあります。 個々のブロックには上記のメッシュ手法が用いられます。 このように、いろいろな手法が考えられていますが、現在の実績では自然対流に必要な 境界層を上手く安定的に計算できるのは非構造格子、不連続格子、重合格子と考えられて います。