あなたは、なぁに?
息子が3歳の時だったと思うけど、姉が学校で仕入れてくる「なぞなぞ」に対抗するため、自分で「なぞなぞ」を考えて、こう言った。
「ポストはポストでも、動くポストは、だぁれ?」
僕には答がすぐに分かった。
自分の息子が考えていることくらいは見抜いているつもりだ。
答は、「ポストマン」です。
postman(ポウストマン)は、もちろん英語で、郵便配達人のことだ。
ウチの子は天才だから、英語まで知っていたなどと思ったことはない。
そんなことがあるわけない。
彼の次の「なぞなぞ」は、「机は机でも動く机は、だぁれ?」だった。
答はもちろん「ツクエマン」だ。
テレビの影響というものはバカにできない。
彼の頭の中では、ポストの格好をした正義の味方や、机の格好をした悪の権化があばれまわっているのだ。
彼が4歳の時、僕が家内と話をしていた。
知り合いの子の写真を撮ってあげたとき、その子は、僕がカメラマンだと思ったらしくて、「いつカメラマンをやめて先生になったの?」と質問をしたという。
「そうだったのか」などと話をしていると、息子が突然、「カメラマンって何?」と訊いてきた。
家内が、「お父さんみたいに写真を撮る人のことよ」と言うと、彼は、「ふうん」とつまらなさそうな顔をした。
僕と家内は笑ってしまった。
彼の頭の中には、顔がカメラか胴体がカメラか知らないが、「カメラマン」がいたに違いないんだから。
で、僕は君達に問いかける。
「あなたは、なぁに?」
あなたは、人ですか、人の格好をした何かですか。
あなたは、だれですか。
あなたは、どこから来てどこへ行こうとしているのですか。
あなたは、どこに住んでいるのですか。
あなたは、どんな世界の中に存在しているのですか。
あなたは、どんな性格をしているのですか。
あなたの長所は、何ですか。
あなたの大きさは、どれくらいですか。
あなたは、何を考えているのですか。
あなたは、何を知っているのですか。
あなたは、どんな行動をするのですか。
本当の真のあなたの本体は、どこにあるのですか。
あなたの正体は、どんなものですか。
あなたの正体を、あなたは好きですか。
自分自身が何なのかが分からなければ、他人のことなど、もっと分からない。
いや、案外、他人のことはよく分かって、自分自身のことが一番分かりにくいのかも知れない。
心って何でしょう。
やさしさって何でしょう。
思いやりって何でしょう。
強さって何でしょう。
愛って何でしょう。
言葉って何でしょう。
命って何でしょう。
自由って何でしょう。
平等って何でしょう。
情報化社会って何でしょう。
国際人って何でしょう。
勉強って何でしょう。
大学って何でしょう。
分からないことだらけの世界の中で、何ものか分からない自分自身が歩き回っている。
分からないことを分からないままにしておいても、大したことじゃない。
井の中の蛙は、大海を知らないからといって不幸なわけじゃないし、不満足なソクラテスより豚は満足しているのだから。
だけど、僕は少しでも多くのことを知りたいし、少しでも多くのことを感じたい。
最終的には、自分自身で考え、体験していかないことには理解できないことばかりだろうけど、少しでも早く理解できるようなヒントを君達に与えることができたなら、君達が僕の歳になったときに、もっと先を考えることができるだろう。
だから、今までに僕が考えてきたこと、気づいたことを君達に伝えようと思う。
どのようなものになるかは、君達の反応しだい。
常に感覚を磨いて、考えていてほしい。
で、あなたは、なぁに?
中学生・高校生のあなたへ
◆ ◇ ◆
2号 言葉ってなぁに?
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