テストの得点について
中学を卒業するまでに、中間・期末・その他のテストで、悪い点というものを取った経験は、あまりなかった。確か、小学校4年生のときに珠算塾の読み上げ暗算で、零点というものを初めて取った記憶があるくらいだった。そんな僕らが高校に入学して、最初の数学実力テストの2枚目は、B4用紙に4題の問題があるだけだった。解答欄の白紙の方が広いテスト用紙など、それまでに見たことなかったし、どの問題を読んでも、どのように計算をすれば解答らしきものが出てくるのか想像もつかなかった。ほぼ白紙に近い状態で時間終了となり、真っ青になってしまった。
さて、数学の時間に、そのテストが返される。先生が言う。「あんたらなぁ、点悪くてもショック受けたらあかんよ。はい、1席、2席・・・。」僕の番がまわってくる。小さい○が2つついていて、右上に数字の「4」が書いてあった。学校のテストで初めて取った最低点。そのときの僕の状況が想像できるかな?僕は、急にニヤニヤしだして、やけに陽気になってしまった。ショックで一時おかしくなったのではない。楽しくなってしまってどうしようもなかったのだ。「高校というところはスゴイところだ。これは本気でやらないと大変なことになるぞ」と思えて楽しくなってしまったのだ。自分の能力をすべて発揮してもだめかもしれない。でも、すべてを発揮しなければならないことだけは明らかだった。
何かに挑戦することは、非常に楽しいものだ。以後、数学のテストでそのような点を取ることは二度となかった。なぜって、テストの前に問題集の問題を全問解いていたから。1題に2〜3時間かけて考えることはザラだった。1週間前からテスト勉強を始めて間に合わなければ、次のテストの前は10日前から勉強を始めた。そうやっていても、どうしても解けない問題がある。限界だと判断した時点で、それはあきらめた。その問題がもし出たら、それはそのときのこと。やるだけのことをやったら、後はテスト中のひらめきに賭けるしかない。それまでに蓄えた知識を総動員して、問題に立ち向かうしかない。蓄えられていない知識を必要とする問題であるなら、それは僕にとってその時点では解答不能である。もちろんその知識は、大学入試の前までには蓄えた。
テストには平均点というものが存在する。みんな、平均点をすぐにききたがった。そうして、平均点より自分の得点が上であれば、ほっと一安心。その段階で、テストの内容ではなく、ただ単に得点というものが一人歩きを始める。自分がそうではなかったと言い切れないが、単純に考えて、半分の人は平均点の上なんだから、自分が上位半分に属していることにどれだけの意味があるというのか。僕にとって、平均点はさほど問題ではなかった。
すべての問題が解けて、満点が取れるはずのテストにおいて、ケアレスミスをして90点だったとする。例えそのテストの平均点が20点だったとしても、僕にとってそのテストは、大失敗なのだ。悔しくってしょうがなかった。逆に、平均点が70点のときに僕の得点が30点だったとしても、自分が今までに蓄えた知識をすべて活用して、ミスもなく30点分の得点を取るのが精一杯だったのなら、それはそれでよかった。もちろん、友人達は僕より多くの知識を蓄えていたのだから、それに追いつく必要性を感じて、その後の自分自身の勉強の計画を変更させることになったが、テストの得点自体でどうのこうのというものではなかった。
結局、得点というものは他人と比較するものではなく、今の自分の現状を認識し、将来の自分自身へ到達するための参考資料だ。戦うべき相手は、すぐに怠けたがる自分自身なのだ。自分の進路をしっかり見据えて、得点なり偏差値なりに惑わされず、自分の現状を常に正しく冷静に判断していってほしい。ただ、勉強しても思うように伸びていないと判断できたら、誰かに相談しなさい。ひとりよがりの勉強方法が間違っている場合があるから。 <注>低得点を肯定しているわけではない。