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むてき 11号

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たとえ話

 理解しにくいことを説明するときに、「たとえ話」はとても有効にはたらきます。当然のことですが、「たとえ話」は、生徒の知っていることでなければなりません。「たとえ話」の方が難しければ、何の説明をしているのか、わからなくなってしまいますから。
 
 「たとえ話」は、本質を直接説明するわけではありませんが、どんなに正しい論理を説明するより、はるかに本質をとらえさせることもあります。
 
 物質は、何からできているのだろうかと、探求していったとき、とりあえず、「原子」というものを科学者(?)は考え出すことができました。原子は、陽子と中性子からなる「原子核」と、そのまわりを回っている「電子」からできています。みなさんも、昔、どこかで習ったことと思います。忘れているとしても、何ら不都合はありません。
 
 ところで、原子核のまわりを回る電子の姿は、何に例えればよいでしょうか。「地球のまわりを回っている月のようなものだよ」「地球のまわりを回る人工衛星のようなものだよ」「土星の輪のようなものだよ」等々。でも、「人工衛星」や「土星」は、今の生徒にはピンとこないかもしれません。生徒の知識がどの程度かが分かっていないと、「たとえ話」もできないわけです。
 
 では、うまい「たとえ話」ができたとして、「原子核のまわりを回る電子」というのは、真実なのでしょうか。実は、100年以上も前から、このことが真実ではないと分かっているのです。「原子核のまわりを電子が回っている」というのは、ウソなのです。ウソが教科書に載っていて、あたかもそれが真実であるかのように先生も堂々と教えているのです。
 
 こんなことをしていて、いいのでしょうか?科学は、発達するのでしょうか?大丈夫です。科学の歴史において、このような時期があったのです。100年たって、科学が大きく進歩しました。現在、正しいと考えられている原子のことを、高校生に説明することなど、できないのです。
 
 「たとえ話」がないと、見えないものを説明するのは大変です。アインシュタインの相対性理論がなかなか広まらなかったのは、うまい「たとえ話が」なかったからだと言う人もいます。でも、100年ほどの時間が流れるうちに、「たとえ話」がなくとも、相対性理論は、多くの人に受け入れられるようになりました。
 
 私が、子供のころ、「怪獣ブースカ」というTV番組がありました。ラーメンが好きな怪獣で、姿を消すことができるけれど、王冠だけは消えないとか、とぼけた怪獣なのですが、内容はほとんど覚えていません。ただ、最終回だけは、いつまでも覚えていました。ブースカが宇宙ロケットに乗って調査に行くという話で、ブースカが地球に戻ってくる頃には、何十年もたっているという設定でした。意味が全く分からず、ずっと疑問に思っていましたが、それが、アインシュタインの相対性理論だったのです。子供向けの番組にそんな理論が使われるほど、世の中に広まってきていたのでしょうかねぇ。
 
 「たとえ話」は、あくまで「たとえ話」であって、生徒ひとりひとりの受け取り方は様々です。本質から外れた受け取り方をする生徒もいるでしょう。でも、何もないより、ましだろうと思います。何かの手がかりがあれば、そこから、思考することができるからです。授業においては、思考をさせることが大切だと思っています。いかに、50分間、頭を使わせるか。眠らせる暇などないのです。

  

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