楽
先日、教え子4人と飲みました。狭い部屋で、男5人が4時間以上にわたり語らいました。この夜は、今までの私の人生の中で、ベスト5に入るであろう「楽しい夜」でした。じゃ、あとの4夜は?と聞かれたところで、何も答えられませんし、ベスト5の根拠もないのですが、とにかく、楽しかったのです。
今までに、楽しい夜は、何度もありました。たとえば、昨年度の企画調整部忘年会で行った大阪の夜。とても楽しかったに違いないのですが、残念なことに、私は途中から意識が無かったので、楽しかったかどうかも記憶にないのです。すごく楽しそうだったと言われるのですが。
私は、毎晩、酒を飲みます。アルコールを分解する酵素には限りがあって、使い切ると死ぬと言う人もいますが、あながち誤りではないかもしれません。アルコールを分解するのに多量のエネルギーを必要とするわけで、体を酷使していることには違いありませんから。
酒によってストレスが発散されるのかどうかは、分かりません。しかし、ストレスが溜まると酒を飲むようになることは経験しています。何とか自分をごまかすために、高いお金を払って飲みにいきます。私はお金を払う客だから、店の彼女たちは私のくだらない話に笑顔で付き合ってくれます。もちろん、そんなものは、作り物だと分かっています。後で虚しくなるだけです。
オフコースの「秋の気配」という歌の「ああ嘘でもいいから ほほえむふりをして」という歌詞のようなものです。いや、状況が違いすぎますね。
先日の「楽しい夜」には、作り物がありません。彼らは、みんな三重県立高校教諭です。いろんな話をしました。ゴキブリを蓋のない箱で繁殖させる方法。ウニを卵からズボンのポケットで育てる方法。車のこと。映画のこと。旅のこと。学生時代のこと。男と女のこと。「宇宙空間(真空)」とビッグバン前の「無」との違い。話題が尽きることはありませんでした。閉会になったのは、閉店になったからです。このままいつまでも続くと思われるような楽しい時間でした。
別に、飲む必要はないのです。夜でなくても構わないのです。彼らと一緒に仕事ができたなら、きっと楽しいに違いありません。
岡野雅行という人がいます。とてつもない技術を持った人で、「痛くない注射針」を作ったし、この人がいなかったら、今のような携帯電話は作れなかったと思われます。会社社長で、社員は数名です。社長をはじめ、社員は月曜日が待ち遠しいと言います。仕事が楽しくて、しょうがないのです。病気で会社を休もうものなら、会社のみんなが楽しいことをやっているに違いないと、悔しくてしょうがないのです。そんな仕事、そんな職場、いいですよね。
先生も生徒も月曜日が待ち遠しい学校。いいですねぇ。
私は、「楽しい夜」に彼らからいろんなことを教えてもらいました。でも、私だけ時間を遡ることができるのなら、私は、彼らの生徒でありたい。純粋な(?)出口少年が彼らから学べば、きっと輝く目をして毎日を生きていたに違いないのです。そうして、やっぱり教師になっていたでしょう。
27号 最終号
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号外2 ノーベル物理学賞
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