壁ってなぁに?
気がついたら目の前に巨大な壁があって、それでも、この壁の向こうに行かなければならないとしたら、どうする?
壁のすきまがないか探してみる。
梯子をかけて登れるところまで登ってみる。
穴を掘って、もぐっていけないかやってみる。
たたけば、案外簡単に崩れるかもしれない。
僕は、自分の能力をフルに使って、考えられることすべてを試すだろう。
そう簡単にあきらめたくはない。
見苦しくってもかまわないから、きっと、ジタバタすることだろう。
高校時代、僕は、失敗するということを、今よりもずっと恐れてた。
若いうちは、どんなに失敗してもやり直せるから、失敗という経験を積むことも大切なことなんだというのは、ずっと後になって分かった。
だけど、その頃は、失敗をする自分というものに、ビクビクしていたんだ。
それでも、平然としていたかったから、どうしたかというと、物事に対して、いろんな結果を想像して、それらの事態が生じたとき、どう自分が対処すべきかを考えた。
だから、事前に考えたことが起これば、冷静に対処できたけど、想像していない突発的なことがらに対しては、即座に判断して行動することができなかった。
今でも、果たして瞬時に正解(正解がない場合もあるし、正解がいくつもある場合もある。)を見つけることができるかどうかは、あやしいものだ。
で、高校生の僕にとって失敗してはいけないことのひとつに、大学受験があった。
浪人してさらに勉強しなくてはならない恐怖があったし、大学生になったら実行しようと考えてた計画が、1年以上遅れることに耐えるのが嫌だった。
大学受験というのは、大きな壁だった。
だけど、これは、突然、目の前に現れてくるものじゃなくて、遠くに壁のあることがよく見えていた。
だから、僕は、自分のペースで、壁に到達したときに壁をヒョイとまたぐことができるように、早くから、緩やかな坂道を登っていった。
壁があることが分かってて、それを見ないようにしていた友人たちは、壁に激突してから、1年計画で階段を作り始めた。
どうして彼らは、もっと早くから準備をしないんだろうかと思ったけど、きっと、彼らには彼らの理由があったんだろう。
でも、あんなにはっきり見えてたことなのにねぇ。
突然、壁が行く手をさえぎることがある。
多少 expect(イクスペクト:予期する)はできたものの、対処するだけの時間がなかったときなど、ぶつかるしかしょうがない。
大切なのは、そのあとだ。
引き返すことができないのなら、突き抜けるために、僕はあらゆる努力をするだろう。
大学1年生のとき、ある教授が、授業に関係なく突然壁の話を始めた。
「目の前に壁が現れたらどうしますか?」って感じで。
その教授が、なぜそんなことを言いだしたのか分からないけど、僕にとっては、結論の出ていることだった。
だけど、その教授は、僕が考えもしなかったことを言った。
「どうしようもなくなったら、しばらく待ちましょう。
そうすれば、壁が突然消えてしまうかも知れませんから」と。
壁が現れたら、がむしゃらに向かって行くことしか考えてなかった僕にとって、何もせずに待つということなど思いもよらなかった。
「時間」を味方にするということに全く気づいていなかったんだ。
時間を味方にすれば、突然現れた壁は、突然消えるかも知れない。
自分自身が巨大化して、簡単にまたぐことができるようになるかも知れない。
量子力学のトンネル効果(量子力学において、普通は超えられないエネルギーの山を、トンネルを通ったみたいに、簡単に通り抜けてしまうこと。)みたいに、壁をすり抜けてしまうかも知れない。
ただ、時間を味方にしたからといって、何の努力もせずにぼーっと待っているだけでは、だめだ。
そんなことじゃ、壁にドアが現れたとしても、見過ごしてしまうことになりかねない。
もう手の打ちようがないと思ったとしても、可能性は残っているものだ。
君は、もう、途方に暮れるほどの壁にぶつかったかい?